建設業の新規許可のときの「500万円以上」の財産があるか?はどのように証明すればいいのでしょうか?

一般建設業の新規申請では、500万円以上の財産の有無が審査されます。

また、特定建設業は、常にその財産的基礎が維持していることが求められます。


【一般建設業の財産的基礎】

「500万円以上の財産があるかどうか」は、次の「1」か「2」の書面を建設業課に提出し、証明します。

  1. 「財産的基礎」による証明
    「自己資本の額」が500万円以上の場合、財務諸表により証明します。
    つまり、決算書上で、「自己資本の額」を証明するということです。「自己資本の額」とは、総資本から他人資本を控除したものです。・法人であれば、決算書上の「純資産合計額」です。・個人であれば、少しややこしいですが、「期首資本金」、「事業主仮勘定」、「事業主利益」の合計額から、
    「事業主貸勘定」の額を控除した額に、負債の部に計上されている利益留保性の「引当金」、「準備金」の額を
    を加えた額、となります。


  2. 「金銭的信用」による証明最も一般的なのが、「銀行の残高証明書」による証明です。
    銀行の預金科目は、普通預金、定期預金、当座預金等、何でもかまいません。その他
    ・500万円以上の申請者名義の所有不動産などの評価証明書
    ・500万円以上の申請者名義の金融機関の融資証明書
    などでも代用できます。

『許可を受けたあとの更新時』は、金融機関の残高証明書は、必要か?

「更新」の審査においては、改めて財産的基礎の審査を受ける必要はありません。

したがって、「金融機関の残高証明書」も必要ないです。

その理由は、新規で許可を受けたときから、毎年「決算変更届」を提出し、5年間営業をした!

という事実があるからです。


行政書士 瓜生寛

特定建設業の財産的基礎、金銭的信用とは、どのようなものでしょうか?

特定建設業は、「許可申請直前」の決算おいて、次の3つの基準すべてを満たしていることが求められます。

  1. 「欠損の額」が資本金の額の20%を超えていないこと。「欠損の額」とは、法人と個人で、科目がかわってきます。
    つまり、「欠損の額」とは、
    ・法人の場合・・・貸借対照表のマイナスの繰越利益剰余金が、
    「資本剰余金」、「利益準備金」、「その他利益剰余金(繰越利益剰余金を除く)の合計額を上回る額。・個人の場合・・・事業主損失が、事業主借勘定から事業主貸勘定の額を控除した額に、
    負債の部に計上されている利益留保性の引当金、準備金を加えた額を上回る額。


  2. 「流動比率」が75%以上であること。
    「流動比率」とは、次の数式で求められます。流動資産÷流動負債


  3. 「資本金の額」が2,000万円以上であり、かつ、自己資本の額が4,000万円以上であること。「資本の額」とは、次の額です。
    ・株式会社・・・払込資本金
    ・特例有限会社・・・資本の総額
    ・合資会社・合名会社・・・出資金額
    ・個人・・・期首資本金

特定建設業の更新の場合でも、上記の3基準を満たさないと、特定建設業は維持できなくなります。

また、許可申請する前に、増資することにより基準を満たすことになった場合は、上記3基準を満たしたことになります。


行政書士 瓜生寛

 

建設業の許可申請のときは、必ず社会保険(健康保険・厚生年金保険)や雇用保険に加入しなければいけませんか?

この答えは、建設業許可の申請のために、社会保険(健康保険・厚生年金保険)や雇用保険に加入する必要が、原則、あります。


【社会保険(健康保険・厚生年金保険)】について

まず、建設業許可でなくても、法人は、社会保険(健康保険・厚生年金保険)は、『強制加入(必ず入る必要がある)』です。

これは、新しい法律により強制加入というのではなく、以前から強制加入だったのですが、この最近、関係行政庁がうるさく加入を推進しています。

たとえば、代表取締役1人と従業員2人の株式会社でも、社会保険(健康保険・厚生年金保険)は、『強制加入』です。

代表者員1人の合同会社でも、社会保険(健康保険・厚生年金保険)は、『強制加入』です。


『強制加入』があるので、『任意加入』もあります。

これは、【個人事業者の従業員数が5人未満】の場合です。個人事業で屋号などで商売をしている方です。

したがって、法人はすべて、社会保険は、『強制加入』なのです。

そして、建設業の許可申請も、社会保険加入を「最終的」にはしなければならない状態です。

社会保険の加入の手続きは、「年金事務所」でおこないます。


【労働保険(雇用保険)】について

労働保険には、「労災保険」と「雇用保険」があります。

建設業許可に関係してくるのは「雇用保険」です。

建設業の場合、労働保険のうち、「雇用保険」のみだけ加入し、「労災保険」は加入しない場合もあります。


「雇用保険」のみ加入という代表事例は、元請工事がなく、下請工事だけの場合です。

この場合、「労災保険」は、元請会社がまかなうのです。

こうように、建設業では、本来、労働保険として「労災保険」と「雇用保険」の両方に加入する義務があるのですが、

例外的に「雇用保険」というパターンも多くあります。

これを、「二元適用事業」といいます。

雇用保険の加入手続きは、ハローワークでおこないます。


いずれにしても、建設業の許可を考えるとき、

  1. 健康保険加入
  2. 厚生年金保険加入
  3. 雇用保険加入

この3点は、加入することを前提に申請を進めます。


行政書士 瓜生寛

 

新規で会社を設立し、建設業の許可をとりたいのですが、注意する点は何ですか?

新規で会社を設立し、建設業許可を取得したい場合,

注意点は、次の3つになります。

  1. 役員の中に「経営業務の管理責任者」がいる。
  2. 一般建設業では、500万円以上の財産的基礎あるいは金銭的基礎の証明が必要。
  3. 新規法人の事業目的に、取得しようとする建設業許可の業種を具体的に記載する。

以上、この3つに注意してください。


まず、はじめに『役員の中に「経営業務の管理責任者」がいる』についてです。

これは、建設業許可の要件で、経営業務の管理責任者は、「役員として登記されている」ことが必要だからです。

現在の登記事項証明書で、役員として「経営業務の管理責任者」が登記されているのが必要です。

そして、建設業許可の経営業務の管理責任者審査は、「役員として登記」にプラスして、実務経験が「5年」であるとか、「7年」であるとかを、建設業課に対し証明します。


次に一般建設業の500万円以上の財産的基礎や金銭的基礎ですが、

これは、株式会社であれば、「500万円以上の資本金で設立した」のを証明すれば問題ありません。

また、500万円以下の資本金で株式会社を設立した場合、会社の銀行残高証明書で「500万円以上の預貯金」を

証明すればいいのです。


最後に、定款の「事業目的」です。

ベストなのは、建設業の申請業種と同一の表現を使用することです。

たとえば、「内装仕上工事」、「土木一式工事」、「建築一式工事」、「大工工事」、「解体工事」等と記載するのです。


もし、申請業種が、会社定款の「事業目的」入っていない場合、

  1. 登記変更により、事業目的を追加する  あるいは
  2. 「念書」を建設業に提出する。

この2つのどちらかをします。できるだけ早く申請したいときは、「2」の「念書」で対応します。

念書を建設業課に提出する場合、念書の内容は、「事業目的に、○○業の記載がありませんが、○○業を事業目的に追加することを約束します。」

といった内容です。

そして、次回の更新時までに必ず変更し、事業年度終了後の決算変更届け時に、変更した定款を建設業課に提出します。


行政書士 瓜生寛

建設業の変更届は、どういうものですか?

建設業の「変更届」は、正式には「変更の届出」をいいます。

「変更の届出」は、建設業新規許可を取得したあとに、変更事項が生じた場合に、建設業課に提出します。

変更を生じた日から、「30日以内」に届出なければならないものと「2週間以内」に届出なければならないものがあります。


【変更後30日以内】

  1. 商号
  2. 営業所の名称
  3. 営業所の所在地・電話番号・郵便番号
  4. 営業所の新設
  5. 営業所の廃止
  6. 営業所の業種追加
  7. 営業所の業種廃止
  8. 役員等の就任
  9. 役員等の辞(退)任
  10. 代表者変更
  11. 氏名変更(改姓・改名)
  12. 支配人新任・退任・氏名変更

【変更後2週間以内】

  1. 建設業法施行令第3条に規定する使用人の変更
  2. 経営業務の管理責任者の「変更・追加」、削除、氏名変更
  3. 専任技術者の変更、氏名変更
  4. 国家資格者・管理技術者の変更

【事業年度終了後4ヶ月以内】

  • 決算報告

建設業の変更届は、上記のように商号または名称、取締役、資本金、営業所の名称や所在地、経営業務の管理責任者、専任技術者に変更があったときに提出します。

届出ですが、変更を生じた日から定められた期間内に届出ることが義務づけられています。

この変更届を怠ると、「6ヶ月以下の懲役または50万円以下の罰金」ということになっています。

あなたが考えるより、けっこう重い罰則になっていると思いませんか?

それだけ、変更届は重要ということです。甘くみてはいけません。


「決算変更届」は、事業年度終了後4ヶ月以内に毎年提出します。

税務署の決算をしたのに、なぜもう1回「決算変更届」をしなければならないのでしょうか?

その理由は、建設業には、「継続的に営業をしていない場合、許可の取消処分」があるからです。

つまり、決算変更届を建設業課に提出することで、次の建設業許可取消の事由に該当しなくなるのです。

「許可をうけてから1年以内に営業を開始せず、または引続き1年以上営業を停止した場合」は建設業許可の取消となる。

決算変更届は、これらのことに該当しないとう証明です。


行政書士 瓜生寛

埼玉県で建設業新規を申請するとき、社会保険未加入でも申請はできますか?

「建設業許可申請の手引き」という冊子が各都道府県ごとに毎年発行されています。

埼玉県の「建設業許可申請の手引き」には、社会保険に加入していない場合、

経営業務の管理責任者や専任技術者の「常勤であること」の証明方法が記載されています。


社会保険未加入の場合の『常勤の確認資料』は、次の3パターンにわかれます。

【パターン1・法人が、社会保険(けんぽ)に未加入、厚生年金保険に加入】

これは、健康保険が「土建組合等の健康保険証」であり、厚生年金保険は、「健保組合に加入」している場合です。

また、雇用保険にも加入しています。

『常勤の確認資料』としては、

  • 雇用保険被保険者証の写し
  • 厚生年金の被保険者標準報酬決定通知書の写し
  • 厚生年金の被保険者の資格取得時、確認通知書の写し(定時決定の対象外となっている場合)

【パターン2・法人が、社会保険(けんぽ)、厚生年金保険、どちらにも未加入】

これは、本来、社会保険法では、「法人は、社会保険への加入義務」があるので、

厳密に言えば、法律違反をしている状態です。

しかしながら、建設業の許可の申請はでき、許可もとれます。

『常勤の確認資料』としては、

  • 国民健康保険証の写し
  • 住民税特別徴収税額通知書の写し(直近分)

※「住民税の特別徴収」とは、簡単にいうと、「従業員の住民税を、会社が一旦立替払いします。そして給料から天引きし、会社にもどす」ものです。


【パターン3・法人が、社会保険(けんぽ)、厚生年金保険、どちらにも未加入・住民税の特別徴収もしていない】

社会保険に加入していない会社はこのパターンが一番多いと思います。

『常勤の確認資料』としては、

  • 国民健康保険証の写し
  • 常勤の念書(申請法人名で作成し、申請法人の実印を押印)
  • 会社の印鑑証明書
  • 源泉徴収簿(源泉徴収票ではないです)または賃金台帳

社会保険に加入していなくても、上記の、経営業務の管理責任者や専任技術者の

『常勤の確認資料』を添付し、建設業許可はとれます。

しかし・・・いつまでも、「社会保険に未加入」というわけにはいかないのです。

まず、建設業課が、「社会保険に加入するように」と指導します。

指導を受けても、社会保険に未加入であれば、建設業課から年金事務所に連絡をし、

最終的には、半ば強制的に加入しなくてはなりません。

以上のように、遅かれ早かれ、社会保険に加入の義務が課せられるのであれば、

建設業許可の新規・更新申請の際に、一気に手続きしまった方が、楽かもしれません。


行政書士瓜生寛